【Shopify】卸をやらない理由が、1つ減りました
みなさんこんにちは。アートトレーディングの藤井です。
前回はAI Toolkitの話をしました。今日は、AIから少し離れて、地に足のついた話を。
さて、本日は、Shopifyの卸売機能について。2026年4月に、静かに、しかし大きな変更がありました。
それでは行ってみましょう。
「卸もやりたいんですが、うちのサイトじゃ無理ですよね」
2026年4月2日に、何が変わったのか
Shopifyには以前から、卸売のための機能が一式そろっていました。取引先を「会社」として登録して、その会社ごとに違う価格を出して、掛け払いで受ける。よくできた仕組みです。
ただし、これまでは Shopify Plus だけのものでした。
それが2026年4月2日、Basic・Grow・Advanced にも開放されました。追加費用はなしです。公式のニュースには「Plus上で4年近くかけて磨いてきたものの主要な部分を、すべての加盟店に展開する」と書かれています。
いちばん下のプランでも、卸ができるようになった。これだけの話なんですが、うちのような支援会社から見ると、なかなかの出来事です。
公式は「B2Bは、Plus以外の加盟店からもっとも要望の多かった機能のひとつだった」とも書いています。私も、そのとおりだと思います。

タグ付けで、しのいできました
正直に書きます。
うちにも、卸の相談はずっと来ていました。展示会に出たら小売店から声がかかった。取引先がまとめて買いたいと言っている。そういう話は、思っているよりずっと多い。
でもPlusでなければ卸機能は使えない。そこでどうしていたかというと、通常のShopifyの機能を組み合わせて、それらしいものを作っていました。取引先のお客様にタグを付けて、そのタグを持っている人にだけ違う価格を見せる。そういうやり方です。
動くには動きます。実際、それで回してきたお店もあります。
ただ、万全ではありませんでした。
卸の売上を本気で取りにいこうとすると、どうしても物足りない。会社という単位がないので、担当者が3人いても3人バラバラの顧客になる。掛け払いの条件も、数量ごとの価格も、仕組みの外で管理することになる。取引先が増えるほど、手作業も増えていく。
公式のニュースにも、まったく同じことが書かれていました。ネイティブの卸機能がないと、加盟店は自分で継ぎ接ぎをするしかない。店の一部をロックし、卸価格を別のシステムで管理し、注文を手で処理する。その摩擦は積み上がっていく、と。
海外の事例も紹介されていて、アイウェアのブランドでは、取引先に交渉済みの卸価格ではなく小売価格が見えてしまうことがあったそうです。それで、そのまま注文しなかった買い手がいた。
読んでいて、少し苦い気持ちになりました。うちがやってきたことも、程度の差はあれ同じ種類のものです。
全プランで使えるようになったもの
では、何が使えるようになったのか。
まず、取引先を「会社」として登録できます。会社の下に拠点があって、拠点ごとに配送先や税の設定を持てる。担当者は拠点に紐づいて、権限も分けられます。発注できる人と、見るだけの人を分けられるということです。
価格は「カタログ」という単位で作ります。この取引先には30%引きの一覧を、この取引先には商品ごとに決めた卸価格を、という具合に。Basic・Grow・Advanced では、このカタログを3つまで持てます。
数量の扱いも入っています。10個で10%引き、50個で20%引きという段階的な価格。1ケース12個単位でしか買えない、最低ロットは何個から、といったルール。卸をやっている方なら、この2つがどれだけ大事かは説明不要だと思います。
支払いは、掛け払いの条件を設定できます。カード情報を保管しておいて次回から使うこともできる。支払期日のリマインダーも出せます。
そして何より、取引先が自分で発注できるようになります。電話とメールで受けていた注文が、ログインして、自分の価格を見て、自分でカートに入れて完了する。

Plusに残されたもの
全部が下りてきたわけではありません。ここは正直に書いておきます。
カタログが3つまで、というのが最初の線引きです。Plusなら無制限に作れて、しかも会社や拠点に直接割り当てられます。取引先ごとに価格がすべて違う商売をしているなら、3つでは足りません。
内金や分割払い、出荷ごとの請求もPlusのみです。大型の受注で「まず半金」という商習慣があるなら、ここは効いてきます。
取引先ごとにチェックアウトの見え方を変える機能は、Advanced以上です。
逆に言えば、卸の取引先が数十社で、価格の体系が数パターンに収まるなら、下のプランで足ります。うちに来る相談の多くは、正直このサイズです。
始める前に、ひとつ確認してください
ここが今日いちばん伝えたい実務の話です。
Basic・Grow・Advanced で卸のカタログ機能を使うには、ストアが新しいShopify Marketsに移行している必要があります。公式のヘルプにはっきり書かれています。
つまり、古いMarketsのままのお店は、まずそこからです。「卸をやろう」と決めてから気づくと、順番が狂います。あとでやればいい作業ではなく、最初にやる作業です。
もうひとつ、日本で使う場合の注意を。公式が挙げている支払い方法のうちACHは米国だけのものです。国内の掛け払いは、与信や請求の実務まで含めると、Shopify標準の支払条件だけで完結しないことがあります。そこは別途アプリを含めて設計することになります。
なお、この記事は2026年9月時点の情報です。プランごとの対応表も料金も、Shopifyは予告なく変えます。実際に判断するときは、必ず公式の最新ページを見てください。
道具は揃った。あとは、やるかどうか
公式が出している数字で、ひとつ腑に落ちたものがありました。
Shopify B2Bを使っている加盟店は、直販に比べて再注文の頻度が最大4.1倍になる、というものです。導入から半年で、取引先が自分で発注する割合が最大33%増えたとも書かれています。
数字そのものより、方向が納得できます。卸は、戻ってくる注文です。一度取引が始まれば、また来る。新しいお客様を連れてくる労力と比べたら、性質がまったく違います。
ただ、勘違いしないようにしたいのは、これは道具が揃っただけだということです。
卸をやるというのは、価格の体系を決めて、条件を決めて、請求を管理して、取引先と長く付き合うということです。仕組みが手に入っても、その仕事が消えるわけではありません。うちがタグ付けでしのいでいた頃も、大変だったのは仕組みではなく、そちらのほうでした。
それでも、始められない理由がひとつ減ったのは事実です。「Plusじゃないから」は、もう理由になりません。
みなさんは、卸の相談が来たとき、どうしていますか。断ってきた話が、思い出せる範囲でありませんか。よかったら教えてください。
それでは、また次回。