【EC】ChatGPTで売れた店は、30店でした

【EC】ChatGPTで売れた店は、30店でした

約4分文・藤井玲(髭男社長)
ShopifyEC×AI

みなさんこんにちは。アートトレーディングの藤井です。

9月に、AIが買い物をする話を書きました。あのあと、答え合わせになる事実がいくつか出てきました。

結論から言うと、当たったところと、外れたところがあります。 今日はそれを正直に書きます。

それでは行ってみましょう。

「AIで買う時代が来るって、結局どうなったんですか」

100万店のはずが、30店でした

2025年の9月、OpenAIがChatGPTの中に決済機能を入れました。Instant Checkoutといいます。会話の流れのまま、ChatGPTを出ずに買える仕組みです。

発表はにぎやかでした。対象は100万店を超えるShopifyの店。 SKIMS、Glossier、Spanx、Vuori。名前の知れたブランドが並びました。11月にはウォルマートも乗り、約20万点の商品を出しました。

半年後です。

2026年2月の時点で、実際に動いていたShopifyの店は、約30店でした。

調査会社フォレスターのアナリストが、今年3月にCNBCへ語った数字です。加盟店の導入作業を「骨の折れる作業」と表現していました。

ちなみにShopifyの社長も、投資家向けの場で「販売用のAIツールを入れている店は十数社」と話しています。数え方は違いますが、桁は同じです。

100万店と30店。桁が4つ違います。

そして今年3月20日、OpenAIはInstant Checkoutをやめました。 代わりに、各社がChatGPTの中に自分のアプリを置き、決済は店側で行う形に変えています。

【EC】ChatGPTで売れた店は、30店でしたの図解1

ウォルマートが、理由を数字で出しました

なぜやめたのか。ウォルマートが測った数字が、いちばん分かりやすいです。

同社の責任者が明かしたところによると、ChatGPTの中で買ってもらう形は、自社サイトへ送った場合の3分の1しか売れませんでした。

会話の中で完結するほうが便利に見えます。でも、実際にはそうならなかった。

理由は想像がつきます。買う直前、人は確認したくなります。写真をもう一枚見たい、サイズ表を開きたい、送料と返品条件を読みたい。チャットの中には、それがありません。

考えてみれば、当たり前かもしれません。私たちも、カートに入れてから商品ページに戻ること、ありますよね。

ただし、集客は2倍でした

ここで終わると、ただの失敗談です。同じウォルマートの調査に、逆の数字があります。

ChatGPT経由で来たお客様は、検索エンジン経由に比べて、新規のお客様である割合が約2倍でした。

つまり、こういうことです。

AIの中で「買わせる」のは、うまくいかなかった。でもAIが「連れてくる」のは、検索より効いている。

別の調査もあります。昨年12月の米国の消費者調査で、AIの中で買い物を済ませたことがある人は22%。 一方、AIで調べてから、別の場所で買った人は50%でした。そして69%が、これからAIの役割は大きくなると答えています。

失速したのは決済です。入口は、むしろ広がっています。

【EC】ChatGPTで売れた店は、30店でしたの図解2

原因は、商品データでした

では、なぜ決済まで行かなかったのか。フォレスターのアナリストは、こう指摘しています。

サイトを巡回して情報を拾うやり方では、商品データの全体を取るには足りない

在庫が合わない。サイズの選択肢が欠けている。配送条件が分からない。そういう状態の商品を、AIは自信を持って薦められません。

9月にも同じことを書きました。拾わせるのではなく、正しいデータを渡しにいく。Shopifyでいえば Shopify Catalog の役割です。

半年かけて業界が出した答えが、結局そこだったというのが、今回いちばん腑に落ちた点でした。

Shopify自身も、いまはこういう立ち位置です。商品はChatGPTの会話の中で見つけてもらう。買うのは、店のサイトで。

半年前、私は何を書いていたか

ここで、自分の答え合わせをします。

9月9日の記事で、私はShopifyが出した数字を紹介しました。AI経由の流入が前年比8倍、AI検索からの注文が約13倍、と。

あのとき、こう書き添えています。

倍率は元が小さければ大きく出ますから、これだけで「もう主戦場だ」と言うつもりはありません

9月17日の記事では、見出しにこう置きました。

ただし、AIは財布までは任されていない

この2つは、残しておいてよかったと思っています。

ただ、威張れる話ではありません。8倍も13倍も100万店も、全部、本当の数字です。 嘘は一つもない。

本当の数字だから、危ないんです。

発表された数字と、実際に動いた数字は別のものです。100万店は「対象」で、30店が「現実」でした。どちらも嘘ではない。どちらを見ていたか、という違いだけです。

私はいまだに、大きい数字を見ると一瞬あおられます。25年やっていても、です。だから書くときは、自分のために但し書きを入れています。

見つけるのはAI、買うのは自社

長くなりました。今日の結論は一つです。

AIの中で決済まで済ませる話は、いったん置いていい。 業界の最前線が半年やって、戻してきた場所です。急いで追いかける必要はありません。

AIに見つけてもらう準備は、やったほうがいい。 こちらは数字が伸びています。しかも新規のお客様の比率が高い。

そして、やることは9月と変わりません。商品データを整えることです。

説明文は、知らない人が読んで分かるか。素材、サイズ、使い方。在庫と価格は正確か。送料と返品条件は書いてあるか。

買う直前に人が確認したくなることと、AIが拾えなくて困っていることは、ほぼ同じでした。 だから、どちらに向けた作業でもありません。ひとつの作業です。

AIが来る前からやるべきだったことでもあります。だから、無駄になりません。

この記事の情報は2026年10月時点のものです。この分野は半年で前提が変わります。判断されるときは最新の発表をあわせてご確認ください。

みなさんのお店の商品ページは、買う直前のお客様が知りたいことを、書き切れていますか。

それでは、また次回。

書いた人

藤井玲(髭男社長)/アートトレーディング株式会社 代表取締役
2001年に自分が楽天へ出店したのが始まりで、ECの現場は25年。支援する側にまわって20年以上、 これまで200社以上のお手伝いをしています。Shopify Plus Partners。制作実績はShopifyだけで150サイトを超えています。 地方のメーカーや生産者のEC事業部として、自社ECの立ち上げから運営まで伴走しています。

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