【EC】広告は、連絡先を買う仕事です

【EC】広告は、連絡先を買う仕事です

約5分文・藤井玲(髭男社長)
Shopify広告と数字

みなさんこんにちは。アートトレーディングの藤井です。

前回は、ROASが高いなら増やすべきだ、という話をしました。LTVが分かれば、出せる金額が変わるとも書きました。

今日は、その続きです。では、そのLTVはどこから来るのか。

それでは行ってみましょう。

「広告はもうやりません。前にやって、儲からなかったので」

「広告はもうやりません」と言われます

支援に入る前のヒアリングで、これもよく言われる言葉です。

前にやった。失敗した。儲からなかった。だから、もうやらない。

気持ちは、痛いほど分かります。出したお金が、そのまま消えたように見えたはずです。

以前、私が広告費10万円を入れる決断に3ヶ月迷った話を書きました。踏み出すのが怖かったのは、私も同じです。

ただ、ここははっきり書かせてください。広告を使わないという選択で、これからのECを伸ばすのは、正直かなり厳しいと思っています。

責めているのではありません。うまくいかなかったのには、たいてい理由があるからです。私が現場で見てきた限り、その理由は2つに絞られます。

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1回目の購入で、黒字にはなりません

ひとつめ。そもそも、初回の購入で黒字になることは、ほとんどありません。

商品のジャンルによって違います。粗利率によっても変わります。だから必ずとは言いません。でも、ほとんどない。これは断言していいと思っています。

前回の数字をもう一度使います。お客様1人の獲得に5,000円。客単価8,000円、粗利率40%なら、初回の粗利は3,200円。その時点では1,800円の赤字です。

Shopifyの公式ブログにも、新規のお客様を獲得するコストは、既存のお客様を維持するコストの5倍から25倍かかる、とありました。よく引用される目安、という但し書き付きの数字ですが、桁の感覚としては現場と合っています。

つまり、初回の売上だけを見て広告の良し悪しを判断すると、ほとんどすべてが「失敗」に見えます。

失敗したのではありません。まだ終わっていないだけです。

広告を黒字にする方法は、ひとつだけです

では、どこで黒字になるのか。2回目です。

私が支援先にいつも言っているのは、これです。広告を黒字にできる唯一の手段は、CRMです。

CRMというと大げさに聞こえますが、やることは単純です。買ってくれた人と、**次に連絡が取れる状態を作る。**それだけです。

広告費は、出すたびにかかります。同じ人にもう一度届けたければ、もう一度お金を払うことになる。

連絡先は違います。一度もらってしまえば、次に届けるためのお金は、ほとんどかかりません。

同じShopifyの記事に、こうもありました。既存のお客様に売れる確率は60%から70%、新規のお客様は5%から20%。これも「よく引用される目安」ですが、実感とずれません。

だから、私はこう考えています。広告で買っているのは、売上ではありません。次に連絡が取れる相手を買っています。

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広告は、クリエイティブだけの話ではありません

ふたつめの理由です。

広告がうまくいかないとき、たいていクリエイティブのせいにされます。写真が悪かった、コピーが弱かった、と。

でも、クリックした先のページが変わっていなければ、何を出しても結果は同じです。

**広告は、誘導先のページの改善とセットで考えないといけません。**ここが片方だけになっているケースを、本当によく見ます。

そして、そのページで確認してほしいことがひとつあります。連絡先をもらえる作りになっているか。

メールを登録してもらう。LINEでつながる。会員登録をしてもらう。初回のクーポンと引き換えでもいい。何でもいいんです。ただ、買った人が黙って去っていく作りだけは、変えないといけません。

広告を出すことと、着地したページで関係を残すこと。この2つは、片方だけでは効きません。

2回買った人は、次も買います

なぜ2回目にこだわるのか。数字があります。

Shopifyが引用しているBluecoreの2025年の調査に、こうありました。一度2回買った人は、そのあとも買う確率が95%高くなる。

1回目と2回目のあいだに、いちばん高い壁があります。そこを越えた人は、そのあとは自分から戻ってきてくれる。

だから、買ってもらったあとの最初の1通が効きます。届く先がなければ、その1通は出せません。

同じ記事に、もうひとつありました。直近3ヶ月に新しいブランドから買った人は88%。しかも、その半数以上が「また買うつもり」でいる。

チャンスはあるということです。ただし、連絡先を持っていなければ、その「また買うつもり」は、思い出してもらえないまま他所に流れます。

ちなみに、もう一度買う理由の上位は、割引やキャンペーンが52%、商品の質が45%、送料無料や配送の速さが38%でした。特別なことは、ひとつもありません。

自分の業界のリピート率を、知っていますか

同じ調査に、業界別のリピート率が出ていました。7つの業種をまとめた全体の数字は**27.4%**です。

ヘルス&ビューティーが41.2%でいちばん高く、百貨店が36.2%、アパレルが31.7%、スポーツ・趣味が27.8%、靴が22.2%、ホーム用品が21.4%、ジュエリー・アクセサリーが19.1%と続きます。

米国の小売のデータなので、そのまま日本の自分の店に当てはめることはできません。ただ、桁の感覚をつかむには十分だと思います。

自分の店のリピート率を出してみてください。ここより低ければ、まだ伸ばせる余地があります。

そして、リピート率が上がれば、お客様1人から受け取る金額の合計が増えます。前回書いたとおり、それは広告に出せる金額が増えるということです。

CRMは、広告と別の仕事ではありません。広告を続けられるようにするための仕事です。

連絡が取れる顧客を獲得するために、広告を出す

最後に、いちばん言いたいことを書きます。

広告を「売上を買う道具」だと思っているうちは、たぶんずっと赤字に見え続けます。初回で黒字になることは、ほとんどないからです。

そうではなくて、**獲得したお客様とつながるために広告を出す。**そう考え方を変えるだけで、同じ数字がまったく違って見えます。

広告で獲得したお客様と、いかにつながるか。これが、いまのECを成長させるうえで、いちばん大事なことだと思っています。

前にやって失敗した、という方こそ、もう一度だけ考えてみてほしいと思っています。失敗したのは広告ではなくて、連絡先を取っていなかったことかもしれません。

この記事の数字は2026年9月時点のものです。海外の調査も含まれるので、判断するときはご自身の店の実数と合わせてご確認ください。

みなさんのお店では、買ってくれた方と、次に連絡が取れる状態になっていますか。

それでは、また次回。

書いた人

藤井玲(髭男社長)/アートトレーディング株式会社 代表取締役
2001年に自分が楽天へ出店したのが始まりで、ECの現場は25年。支援する側にまわって20年以上、 これまで200社以上のお手伝いをしています。Shopify Plus Partners。制作実績はShopifyだけで150サイトを超えています。 地方のメーカーや生産者のEC事業部として、自社ECの立ち上げから運営まで伴走しています。

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