【EC】1つを2倍にするより、3つを2割ずつ

【EC】1つを2倍にするより、3つを2割ずつ

約6分文・藤井玲(髭男社長)
Shopify脱モール広告と数字

みなさんこんにちは。アートトレーディングの藤井です。

9月の終わりから、広告とお金の話を続けてきました。いくら出すか。なぜ連絡先が要るか。今日で3本目、最後です。

さて、本日は、LTVをどうやって伸ばすのかを。

それでは行ってみましょう。

「LTVを上げろと言われても、何をすればいいのか」

私も、広告には否定的でした

最初に、正直なことを書きます。

私がCRMの重要性を強く感じるようになるまでには、けっこう時間がかかりました。

理由はふたつあります。

ひとつは、化粧品やサプリのように、ランディングページから定期購入につなげるビジネスの支援を、うちが専門的にやってこなかったからです。あの領域の人たちにとっては、CRMは最初から当たり前でした。私はそこにいなかった。

もうひとつは、もっと単純です。**10年くらい前は、楽天が中心でした。**モール内のSEOをちゃんとやれば、広告を出さなくてもそれなりに売れた。だから私は、広告というものに対して、どちらかというと否定的でした。

前回、広告はもうやりません、と言われる話を書きました。あれは他人事ではありません。かつての私も、同じ側にいました。

【EC】1つを2倍にするより、3つを2割ずつの図解1

脱楽天を掲げた瞬間に、話が変わりました

前提が変わったのは、自社ECを本気で支援するようになってからです。

脱楽天を掲げて自社サイトをやると決めた瞬間、ひとつはっきりしたことがあります。自社サイトは、広告を使わないと始まりません。

モールには、探しにくる人がいます。自社サイトには、その人がいません。誰も来ない場所に、いい商品を並べているだけになります。

例外はあります。もともとYouTubeやSNSで集客に成功していて、そこから物販に手を出す方。あの方たちは、自前の入口をすでに持っています。だから広告なしでも成立します。

でも、それ以外のほとんどの事業者さんは違います。**広告を使わなければ、事業はスケールしません。**むしろ、何も起こらないと言っていいと思っています。

10年前に広告を否定していた私が、いまはこう言っています。前提が変わったからです。

試行錯誤の末に、CRMはマストだと決めました

では、広告を使いながら、どうやって自社EC事業を成り立たせるのか。

ここを何度も試行錯誤しました。そして自分の中で結論が出ました。CRMはマストです。

前回書いたとおり、初回の購入で黒字になることは、ほとんどありません。だから広告を続けるには、2回目以降で回収するしかない。そのために連絡先が要る。

順番でいうと、こうです。広告を出す。連絡先をもらう。2回目につなげる。そこでようやく黒字になる。

そして、支援先を見ていて気づいたことがあります。**自社で運営されている事業者さんは、ここをほとんどやっていません。**やる時間がないのか、必要だと思っていないのか、たぶん両方です。

だからそこを引き受けて、広告を使える状態まで持っていく。それがうちの仕事なんだと、あるときはっきり分かりました。

この3本を書いたのは、それを伝えたかったからです。

【EC】1つを2倍にするより、3つを2割ずつの図解2

LTVは、サブスクの人だけの数字ではありません

ここから実務の話に入ります。その前に、ひとつ誤解を解かせてください。

LTVというと、ランディングページをガンガン回して定期購入につなげる、あの世界の数字でしょう。そう思われがちです。冒頭に書いたとおり、私自身がそう思っていました。

違います。LTVは、すべての事業者が意識する数字です。

そして、この数字を自分で決めておくと、いいことが起きます。**広告を出すのが、怖くなくなります。**いくらまで出していいかが分かるからです。前々回に書いた話は、結局ここに戻ってきます。

LTVという言葉は難しく聞こえますが、中身は単純な掛け算です。Shopifyの公式ブログにも、そのまま載っていました。

LTV = 客単価 × 購入頻度 × 続く年数

たとえば、客単価5,000円のお店で、お客様が年に3回買ってくれて、2年続くとします。

5,000円 × 3回 × 2年 = 30,000円

このお店は、お客様1人から生涯で3万円を受け取る計算になります。前々回の話につなげると、獲得に使っていいお金の上限は、ここから決まります。

1つを2倍にするより、3つを2割ずつです

さて、ここからが今日いちばん伝えたいことです。

LTVを上げろと言われて固まってしまうのは、どれか1つを劇的に変えなければいけないと思うからだと思います。客単価を2倍にする。頻度を2倍にする。どちらも、正直かなり難しい。

でも、掛け算です。だから、こうなります。

客単価を2割上げて6,000円。頻度を2割上げて年3.6回。続く年数を2割伸ばして2.4年。

6,000円 × 3.6回 × 2.4年 = 51,840円

3万円が、5万1,840円になりました。1.728倍です。

どれも2割です。単価を1,000円上げる。年3回を年3.6回にする。2年を2年5ヶ月にする。ひとつずつ見れば、どれも手が届く範囲だと思います。

1つを2倍にするのは大変ですが、**3つを2割ずつなら、たいていの店でできます。**そして結果は、2倍近くになります。

単価・頻度・年数、動かす順番があります

3つとも上げる、と言われても順番が要るので、私の考えを書きます。

**客単価は、いちばん早く動きます。**今日やって、今週結果が出ることもあります。まとめ買いの提案、送料無料までの金額を示す、関連商品を並べる。Shopifyの公式ブログに出ていた例では、カートに入れたあとに延長保証をポップアップで出すお店がありました。保証そのものは第三者が対応するので、運用の手間もほとんど増えないそうです。

**購入頻度は、思い出してもらえるかどうかです。**消耗品なら、そろそろ無くなる頃に一通。季節ものなら、去年買った時期に一通。ここは前回の話とつながります。連絡先がなければ、この一通は出せません。

**続く年数は、いちばん遅く効きます。**でも、いちばん大きく効きます。同じ公式ブログに、月ごとの定期購入を6ヶ月ごとに切り替えると1,000円ほど得になる仕組みにしたお店の例がありました。結果、平均の継続が5ヶ月から8ヶ月に伸び、お客様1人あたりの生涯価値が2万円ほど増え、解約は18%減ったそうです。しかも、紹介も増えたと。

早く動くものから手をつけて、遅く効くものを仕込んでおく。順番はそれだけです。

掛け算なので、ゼロがあると全部ゼロです

最後に、掛け算だからこその話をひとつ。

3つのうち、どれかがゼロに近いと、他をどれだけ頑張っても全体はゼロに近いままです。

そして、いちばんゼロになりやすいのが、頻度と年数です。理由ははっきりしています。買ってくれた人と連絡が取れないからです。

連絡先がなければ、思い出してもらう手段がありません。思い出してもらえなければ、2回目はありません。2回目がなければ、続く年数も伸びません。掛け算の2つが、同時に潰れます。

だから前回、広告で買っているのは連絡先だ、と書きました。あれはLTVの話でもあったんです。

広告を出す。連絡先をもらう。単価と頻度と年数を、それぞれ2割ずつ伸ばす。この3本で書いてきたことは、全部ひとつながりの同じ話です。

広告を使わなければ、事業は動きません。でも広告だけでは黒字になりません。だからCRMで連絡先を持ち、LTVを伸ばして、広告に出せる金額を増やす。そしてまた広告を出す。

この輪が回り始めたお店は、強いです。

今回の3本、ROASとCRMとLTV。この3つは、EC事業者にとって必読だと思っています。これを知る前に広告をやってはいけません、と言いたいくらいです。

逆に言えば、これが分かってしまえば、投資は怖くなくなります。数字が読めるというのは、そういうことだと思っています。

ぜひ一緒に、成長のループを作っていきましょう。

この記事の計算例は2026年9月時点の情報をもとにしたものです。数字はご自身の店の実数で必ず出し直してください。

みなさんのお店の客単価、購入頻度、続く年数。3つとも出したことはありますか。まずは今の数字を並べるところからで十分だと思います。

それでは、また次回。

書いた人

藤井玲(髭男社長)/アートトレーディング株式会社 代表取締役
2001年に自分が楽天へ出店したのが始まりで、ECの現場は25年。支援する側にまわって20年以上、 これまで200社以上のお手伝いをしています。Shopify Plus Partners。制作実績はShopifyだけで150サイトを超えています。 地方のメーカーや生産者のEC事業部として、自社ECの立ち上げから運営まで伴走しています。

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