【EC】Museを閉めたAmazon、開けたShopify

【EC】Museを閉めたAmazon、開けたShopify

約4分文・藤井玲(髭男社長)
Shopify脱モールEC×AI広告と数字

みなさんこんにちは。アートトレーディングの藤井です。

先月、AIが買い物を代行するアプリが出ました。Amazonはそれを止め、Shopifyは翌日に通しました。

同じAIに、正反対の判断です。理由をたどると、モールという商売の本体が見えてきます。

それでは行ってみましょう。

「AIが勝手に買い物をするなんて、まだ先の話でしょう」

Museは、買い物を代行するAIです

Metaが9月8日に公開しました。名前は Muse。

メールの処理、旅行の手配、そして買い物をやります。iPhone、Android、Web、WhatsAppから使えます。料金は無料プランと、月20ドル、月100ドル。

公開から12日で、米国の無料iPhoneアプリで1位になりました。2位はChatGPTです。最初の6日で90万回以上、2週間で約280万回ダウンロードされています。

ダウンロードの速さの順位なので、使われている量そのものではありません。ただ、手に取った人がこれだけいるということです。

やることは素朴です。「この条件で買っておいて」と頼む。Museがサイトを回り、商品を選び、決済まで済ませる。人が商品一覧をスクロールする工程が、まるごと消えます。

25年前、楽天に出した頃も「ネットで物なんか売れない」と言われました。新しい入口は、いつも早すぎるように見えます。

【EC】Museを閉めたAmazon、開けたShopifyの図解1

Amazonは、閉めました

その1位になった9月20日の夜、MuseでAmazonの商品を買おうとした人の画面に、こう出ました。

「許可されていないAIエージェントによるアクセスの継続は、Amazonの利用規約に違反します」

Amazonが挙げた理由は3つです。

Metaから事前の連絡がなかった。エージェントが自分の正体を名乗らない。顧客のログイン情報を保存しているように見える。

3つめはMetaが「パスワードや支払い情報は見ていない」と反論しています。外からは判断できません。

ひとつだけ言えるのは、この2社はもともと組んでいることです。Amazonの商品は2023年からFacebookとInstagramで買えます。Metaは今年4月、AmazonのチップでAIを動かす数十億ドル規模の契約を結びました。

組んでいる相手にすら、閉めました。

Shopifyは、翌日に開けました

Shop Payのエージェント決済をMuseに開放しました。Shopifyで作った店なら、Museがそのまま決済できます。ザッカーバーグは「提携はこれからも増える」と言っています。

ShopifyがAmazonを見て動いたわけではないと思います。この種の提携は何ヶ月も前から準備するものです。たまたま判断が隣に並びました。

ただ、並んだので分かりやすくなりました。同じAIに、一方は閉め、一方は開けた。

【EC】Museを閉めたAmazon、開けたShopifyの図解2

理由は、広告です

海外の分析記事に、こんな一行がありました。

AIの買い物エージェントは、クレジットカードを持った広告ブロッカーである

Amazonの2025年の数字です。

広告の売上が686億ドル。 前年から22%伸びています。

一方、商品を売る事業の営業利益は、北米が296億ドル、海外が47億ドル。合わせて343億ドルです。

片方は売上、片方は利益なので、本来そのまま並べる数字ではありません。ただ、広告はほとんどが利益として残る商売です。桁の感覚としては、こう見て差し支えないと思っています。

広告だけで、店を売る商売の約2倍の規模になっています。

AIが買うと、どうなるか。商品データを読み、条件に合うものを選び、決済して終わり。スポンサー枠を一度も見ません。

人が検索結果を上から眺めて、広告の商品が目に入る。あの数秒が消えます。売上は残り、広告の表示だけが消える。

そしてAmazonは自社のショッピングAIは動かしています。 そちらの回答には、広告枠が入っています。

Amazonが守ったのは、商品でも顧客でもなく、広告枠です。

責めてはいません。あの構造を持つ会社として、まっとうな判断です。

Shopifyには閉める理由がなかった。守るべき広告枠を持っていないからです。

広告は麻薬だと、思ってきました

自分の話をします。

モールで広告を使ってきた年月は長いです。そしてずっと、これは麻薬だと思いながら使ってきました。

やめたら売上は落ちます。やっても利益は残りません。それでも昨対は超えなければならない。だから、やめられない。

この葛藤は、今でも続いています。答えが出たから書いているのではありません。25年やって、まだ出ていません。

ただ、今回の686億ドルを見て、ひとつ腑に落ちました。

私の意志が弱かった、という話ではなかった。

モールの収益の柱が広告である以上、広告を買い続けるように設計された場所に、私は立っていた。 そういう構造だから、やめられない感覚になる。

開け閉めを、誰が決めるか

これからの買い物は、AIが探して選ぶ場面が増えます。少しずつでも、確実に増えます。

そのとき、AIに来てもらうかどうかを誰が決めるのか。

モールにいる限り、決めるのはモールです。その会社の収益構造が決めます。良いか悪いかではなく、こちらに決定権がない。 今回Amazonが閉めたとき、Amazonで売っていた事業者に相談はありませんでした。

自社サイトなら、決めるのは自分です。開けてもいい、待ってもいい。選ぶ人が自分であることが違います。

モールは否定しません。入口としては今でも強い。私もまだ使っています。

ただ、入口をいくつ持っているか。そのうち自分で開け閉めできるものが、いくつあるか。 一度数えてみる価値はあります。

この記事の情報は2026年10月時点のものです。動きが速い分野なので、判断されるときは最新の発表をご確認ください。

みなさんのお店に、広告をやめたら売上が落ちるという感覚はありますか。もしあるなら、商品の力の問題ではないかもしれません。

それでは、また次回。

書いた人

藤井玲(髭男社長)/アートトレーディング株式会社 代表取締役
2001年に自分が楽天へ出店したのが始まりで、ECの現場は25年。支援する側にまわって20年以上、 これまで200社以上のお手伝いをしています。Shopify Plus Partners。制作実績はShopifyだけで150サイトを超えています。 地方のメーカーや生産者のEC事業部として、自社ECの立ち上げから運営まで伴走しています。

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