ECのリピート率とは?計算方法からリピート率の平均、向上のための施策まで紹介します!
ECサイトのリピート率を計算する方法は?業界別の平均が知りたい!と気になっていませんか。
ECサイトのリピート率の計算式は、以下のとおりです。
また業界別のリピート率平均は、以下のとおりです。
| 業界名 | 平均リピート率 |
|---|---|
| アパレル | 約35% |
| 化粧品・健康食品 | 約50% |
| PC販売 | 約25% |
| 旅行サービス | 約45% |
この記事では、他にもECサイトのリピート率の改善アプローチなど、実務で必要なポイントを体系的にわかりやすく解説します。
リピート率の全体像を理解することで、自社ECの課題がどこにあるのかが明確になり、売上の底上げにつながる改善施策が見えてきます。ぜひ参考にしてくださいね。
目次
ECのリピート率とは?

ECのリピート率とは、一定期間内に2回以上購入した顧客がどれくらい存在するかを示す指標です。
新規顧客が再び商品を購入してくれるかどうかを測ることで、商品の満足度、購買体験、顧客との関係性などを総合的に判断することができます。リピート率が高いECサイトは、顧客からの支持を得ている証拠であり、広告費に依存しすぎない安定した売上構造を築きやすくなります。
一方、リピート率が低い場合は、商品価値が適切に伝わっていない、フォローが不足している、購入体験に問題があるなど、改善すべき課題が潜んでいることが多いです。
EC事業の利益性や成長性を判断するうえで、リピート率は非常に重要な指標です。
リピート率はどのくらいが理想?
理想的なリピート率は、商材や業界によって大きく異なります。
日用品や食品などの高頻度で消費される商材では、30〜50%以上のリピート率が一般的ですが、高価格帯のアパレルや家電の場合は10〜20%でも高い成果といえるケースがあります。
また、初回→2回目購入率が特に重要で、ここが30%を超えてくると事業全体のLTVが大きく向上し、安定した売上基盤をつくりやすくなります。
理想値は一概に決められませんが、「自社の商材特性」「競合平均」「過去推移」の3つを基準に判断することが大切です。
そのうえで、定期購入やCRM設計など継続施策を組み込むことで、理想値に近づけていくことができます。
リピーター率との違い
リピート率とよく混同される指標に「リピーター率」がありますが、両者は意味が異なります。
リピート率は「購入者全体のうち、2回以上購入した人の割合」を示します。一方、リピーター率は「顧客全体(購入していない人を含む)のうち、リピートした人の割合」を指すものです。つまり、リピート率は購入者ベース、リピーター率は全顧客ベースの指標であり、計測対象が異なります。
そのため、リピート率が高くても、そもそも購入母数が低いとリピーター率が低くなることもあります。施策評価を行う際は、それぞれの定義と特性を理解して使い分けることが重要です。リピートの課題を正しく把握するためには、両方の指標を併用することが効果的です。
ECのリピート率計算方法

リピート率を正しく把握するためには、目的に応じて計算方法を使い分ける必要があります。
もっとも基本的なリピート率から、顧客の継続状況を深く分析できるコホート分析、短期と長期で傾向を把握する累計・単月リピート率など、複数の指標があります。
特にECは新規顧客の増減によって数値が大きく変動するため、「どの計算式で評価しているか」が非常に重要です。ここでは、実務で頻繁に使われる代表的な計算方法を分かりやすく整理して解説します。
基本のリピート率の計算式
最も一般的なリピート率は「一定期間内に2回以上購入した顧客がどれだけいるか」を表す指標です。
計算式は下記の通りです。
たとえば、1ヶ月の購入者が1000人いて、そのうち200人が2回以上購入していれば、リピート率は20%になります。
ECでは新規獲得よりも既存維持の方がコスト効率が良いため、まずこの基本指標を把握することで、顧客の定着度合いを直感的に理解できます。
期間を区切る計算方法(コホート分析)
コホート分析は「同じタイミングで購入した顧客のその後の継続状況」を追跡する分析手法です。
具体的には、「1月に初回購入した顧客」「2月に初回購入した顧客」というようにグループを分け、それぞれが2回目、3回目の購入をどのくらいの割合で行ったかを計測します。
例
・1月初回購入者100人のうち、30日以内に15人が再購入 → 15%
・60日以内に25人が再購入 → 25%
・90日以内に30人が再購入 → 30%
この方法は、単月データだけでは見えない「顧客維持力」や「施策の効果」を把握するのにとても有効です。
特に定期購入商材や単価の高い商材で使われることが多く、改善の方向性を明確にできます。
累計リピート率と単月リピート率の違い
リピート率には主に2種類あり、それぞれ意味が異なります。
累計リピート率
ある顧客グループが「最初の購入から累計で何%が再購入したか」を示す指標です。
例
・初回購入者100人
・3ヶ月以内に40人が2回目購入
累計リピート率は40%
累計なので、時間が経つほど数値は上がりやすくなります。
単月リピート率
「その月に購入した顧客のうち、同じ月内または翌月以降に再購入した割合」を測る数値です。
短期的な変化に敏感で、施策の直後の反応をつかみやすい特徴があります。
例
・4月の購入者500人
・4月内に2回目購入した人50人
単月リピート率は10%
累計は長期の定着度、単月は短期の評価指標として活用するイメージです。
計算時に注意すべきポイント
リピート率は便利な指標ですが、前提を誤ると正確に評価できないため注意が必要です。
まず、新規顧客が急増すると分母が大きくなるため、リピート率が一時的に下がることがあります。この数値変動だけで施策の良し悪しを判断するのは危険です。
また、商材ごとに購入頻度が異なるため、日用品と高級品では適正なリピート率が変わります。必ず業界基準や商品特性を踏まえて評価することが大切です。
さらに、30日以内、60日以内など計測期間が揃っていないと比較ができないため、期間設定は社内で統一しておく必要があります。加えて、定期購入やサブスク商材は通常のリピート率では実態を捉えにくいため、継続率や解約率など別指標で評価する方が適しています。
こうした点を押さえることで、リピート率をより正しく活用できます。
【業界別】ECのリピート率平均値

リピート率の理想値は商材ごとに大きく変わるため、業界別の平均値を知ることは、正確な課題判断に欠かせません。
アパレル、化粧品、健康食品、PC販売、旅行など、それぞれ購買頻度・価格帯・利用目的が異なるため、同じリピート率でも意味がまったく変わります。自社の数値が「高いのか・低いのか」を適切に判断し、改善すべきポイントを把握するためにも、ここからは業界別の傾向をみていきましょう。
アパレル業界
アパレルECの平均リピート率は約35%とされています。
複数のサイトで比較されることが多く、サイトのブランド力により、リピート率に大きな差が出ているのが特徴です。
そのため、自社のブランド力を強めていくという施策がポイントになります。
化粧品と健康食品
化粧品や健康食品を取り扱うECサイトの平均リピート率は約50%といわれています。
これはかなり高い数値で、日々利用される消耗品の特徴です。
購入間隔が短いという点と定期購入サービスの定着が、高いリピート率の理由です。
化粧品や健康食品は定期購入という形での購入に抵抗がなく、リピーターが付きやすいです。
そのため、リピート率を特に意識する必要がある業界と言えます。
PC販売
PC販売を行うECサイトでの平均リピート率は約25%といわれています。
この低い数値の原因は、購入間隔の長さにあります。
PCは、化粧品や健康食品のように毎月購入するものではなく、数年に一度しか購入することはありません。
また、購入間隔が空くということは、以前購入したサイトを覚えていない可能性が高く、それもリピート率の低下につながってしまいます。
旅行サービス
旅行サービスの分野での平均リピート率は約45%といわれています。
旅行サービスのリピート率が高い理由の一つは、次回手続きの簡略化にあります。
基本的に会員登録が必要で、住所や氏名、支払い方法をサイトが記憶してくれるため、別サイトで再入力する手間が発生します。
個人情報を複数サイトに登録したくないという心理も働き、同じサイトを継続利用する傾向が強くなります。
ECのリピート率を上げるべき理由

リピート率の向上は、売上だけでなく利益率・ブランド力・事業の安定性など、EC運営におけるあらゆる指標に良い影響を与えます。
新規獲得コストが年々高騰する中、既存顧客が継続して買ってくれる構造は、EC事業にとって最も大きな資産となります。また、継続購入によってLTVが向上することで、投資余力が生まれ、新たな挑戦や事業拡大も可能になります。利益体質の強いEC事業をつくるために、なぜリピート率が絶対に必要なのかを具体的に解説します。
新規獲得よりもコスト効率が良いから
EC事業では、新規顧客を獲得するための広告費が年々高騰しており、初回購入に至るまでのコストは増加し続けています。
一方で、既存顧客はすでに商品やブランドを知っているため、購入への心理的ハードルが低く、追加の広告費を多くかけずとも自然にリピートしてくれます。
一般に「新規獲得は既存維持の5倍コストがかかる」と言われるほど、両者の効率差は大きく、リピート率の向上はダイレクトに利益改善へとつながります。
購入単価がそこまで高くない商品でも、継続的な購入が積み重なれば利益は安定し、広告依存のリスクも軽減できます。
このように、既存顧客を大切にし、リピートしてもらう仕組みを整えることは、EC運営の根幹ともいえる重要な戦略です。
売上の安定化につながるから
新規獲得に依存した売上構造は、広告費の変動や競合状況に左右されやすく、月ごとの売上ブレが大きくなりがちです。
リピート率が高いECは、既存顧客が一定の頻度で購入してくれるため、売上の下支えとなり、計画的な事業運営が可能になります。
特に食品、健康食品、日用品などリピート前提の商材では、固定的に購入してくれる顧客層があるかどうかで売上の安定感が大きく変わります。
さらに、安定した売上があることで、広告投資や新商品の開発にも余裕が生まれ、事業を成長させるための攻めの施策にも取り組みやすくなります。
長期的な視点で見ても、売上の基盤を強固にするためにはリピート率の向上が欠かせません。
LTV(顧客生涯価値)が向上するから
リピート率が上がるということは、1人の顧客が生涯にわたりブランドにもたらす売上が増えるということです。
LTVが高いほど、EC事業は安定し、原価率の高い商材でも広告投資を回収しやすくなります。初回購入は利益が出にくい商材であっても、2回目、3回目と継続して購入してもらうことで利益率は改善し、事業全体の採算性が大きく向上します。また、LTVが高い顧客が増えるほど、広告のCPAに多少の変動があっても耐えられるようになり、事業の意思決定も柔軟になります。
定期購入やサブスク型のビジネスではもちろん、単品リピート系のECでもLTV向上は最重要テーマであり、リピート率の改善は重要です。
競合比較されにくくなるから
リピーターが増えると、顧客が他社商品と比較する機会が減り、「そのブランドを選ぶのが当たり前」という状態が生まれます。
特に食品や美容・ヘルスケア商材では、使用感や味、習慣性などの要素が重要なため、一度気に入ってもらえると顧客は簡単には離れません。
結果、価格競争に巻き込まれにくくなり、値下げに頼らない健全な運営ができるようになります。また、競合の広告やキャンペーンに影響されにくくなるため、顧客維持のコストも抑えられます。
ブランドへの信頼感が蓄積されることで、多少の価格差や配送日数の違いがあっても選ばれ続ける状態を築ける点が大きなメリットです。
レビュー・口コミが増えて新規獲得効率も上がるから
リピーターが多いECサイトはレビュー投稿数も自然と増え、ポジティブな口コミが積み重なることで、新規顧客の購入率も高まります。
購入検討時に他者のレビューを参考にするユーザーは非常に多く、特に美容、健康食品、食品分野では影響力が大きいです。良質な口コミは広告では作り出せない信頼性を持ち、自然と購入ハードルを下げてくれます。
さらに、SNSでの紹介や友人への口コミなど、広告費をかけずに新規流入が発生する効果も期待できます。
つまり、リピート率の向上は既存顧客の売上を増やすだけでなく、新規獲得の効率をも引き上げる相乗効果をもたらします。
長期的なブランド価値が高まるから
リピートされ続けるブランドは、市場からの信頼が厚く、長期的に選ばれる強いブランドへと成長していきます。
継続して購入されるということは、顧客が商品やサービスに満足し、生活の一部として定着している証拠でもあります。この積み重ねがブランドの評価を高め、値下げ競争に巻き込まれない堅牢なポジションを築くことにつながります。
また、リピート率の高いブランドは投資家やパートナー企業からの評価も高く、事業拡大や新規チャネル展開にも有利に働きます。
短期売上に左右されない体質をつくるためにも、リピート率の向上はブランド価値向上の重要な要素です。
ECのリピート率を上げる方法

リピート率を高めるためには、「商品」「体験」「コミュニケーション」「仕組み」の4つの観点から改善を行うことが重要です。
商品価値の伝え方、購入後フォロー、UI/UX改善、CRM設計、ブランド体験など、リピートを生み出す要素は多岐にわたります。ここでは、EC事業者が今すぐ取り組める具体的な改善施策を網羅的に整理し、どのように顧客満足と継続購入を実現するかを詳しく解説します。
商品価値を正しく伝えるコンテンツを強化する
リピート率を高めるための第一歩は、顧客が商品に対して正しい理解と期待を持てるように情報を届けることです。
商品ページやLPでの説明不足が原因で「思っていたのと違う」というギャップが生まれると、初回購入で終わってしまうケースが少なくありません。
特徴、効果、使用方法、利用シーン、他商品との違いなどを丁寧に伝えることで商品価値が適切に伝わり、満足度が向上します。
また、動画やBefore/After、ストーリー性のある説明を追加すると顧客の理解が深まり、継続購入を後押しします。
特に美容、食品、ヘルスケアのように体験が重要になる商品は、使用感のリアルな表現がリピート率に直結します。
購入後のフォローを最適化する
購入後のコミュニケーションはリピート率向上の重要な鍵です。
商品が届くまでの案内や使い方のサポート、効果を感じるためのコツなどをタイミングよく届けることで、顧客が最初の購入体験でつまずかないようにできます。
特に使用方法が複雑だったり、効果を実感するまでに時間がかかる商材はフォローの質が成果を大きく左右します。
LINE配信やメールによるアフターフォロー、到着直後の利用促進メッセージ、数日後のサポート案内など、顧客が不安を抱えない状態をつくることが重要です。
結果的に商品への満足度が高まり、自然と再購入につながります。
商品改善をする
リピート率が伸び悩む原因のひとつは、商品そのものが顧客の期待を満たしていないケースです。
レビュー分析や顧客アンケートをもとに改良を重ねることで、購買体験を進化させることができます。特に食品や美容系は味・香り・触感などの細かな要素が満足度に大きく影響するため、改善がリピートに直結します。
また、パッケージの使いやすさや内容量の調整も改善ポイントのひとつです。商品の品質が向上すれば口コミの質も上がり、新規顧客獲得にもプラスの循環が生まれます。
商品改善は最終的にブランドの信頼を高め、長期的なファン育成にも貢献します。
定期購入やサブスクを導入する
定期購入やサブスクモデルは、顧客の購買サイクルに合わせて継続的に商品を届ける仕組みであり、リピート率向上に非常に効果的です。
特に日用品や美容、健康食品のような継続利用前提の商材では、購入の手間をなくし、顧客が継続しやすい環境を作れます。
また、割引や特典を付けることで継続率も高まり、企業側は売上予測が立てやすくなります。
一方で、解約手続きが煩雑だと不信感を生むため、安心して利用できる設計が必要です。
顧客が自然に続けたいと思える柔軟性と利便性が、サブスク成功の鍵となります。
UI/UX改善で「買いやすさ」を高める
リピート購入のハードルを下げるためには、ECサイトの使いやすさが欠かせません。
購入ボタンが見つかりにくかったり、決済手続きが複雑だったりすると、意欲があっても途中で離脱してしまいます。カート導線の最適化、決済ステップの削減、スマホ表示の改善、再購入ボタンの設置など、顧客がストレスなく購入できる環境づくりが重要です。
特にスマホユーザーが多い商材では、タップしやすい配置や読み込み速度の改善もUXに直結します。
UI/UX改善によって離脱率が下がれば、そのままリピート率にも影響します。
LTV向上を目的としたCRM設計を行う
リピート率向上には、顧客の状態に合わせたコミュニケーションを設計するCRMが欠かせません。
初回、2回目、3回目、それぞれの購買タイミングで必要な情報や適切なオファーは異なります。顧客データをもとに、属性や行動に合わせたパーソナライズ配信を行うことで、再購入を自然に促すことができます。
また、優良顧客向けの特別な案内や限定キャンペーンもLTV向上に効果的です。
顧客の心理に寄り添ったCRM設計が、長期的な顧客維持の柱となります。
ブランド体験を向上させファン化を促す
長期的に愛されるブランドは、商品そのものだけでなく、購入体験や世界観、メッセージ性といったブランド体験を大切にしています。
梱包のデザイン、サンクスカード、ストーリー性のあるブランドメッセージなど、顧客が心地よく感動する体験は記憶に残り、また購入したいという気持ちを生みます。SNSでの発信やコミュニティ運営によって顧客との距離を縮めることも効果的です。
ファン化が進めば価格競争に巻き込まれにくくなり、自然とリピートにつながります。ブランド価値の向上は、EC事業における最も強力な長期戦略のひとつです。
EC×リピート率低下の原因とは?

リピート率が下がる背景には、明確な原因があります。
しかし、多くのECでは「どこに問題があるのか」が特定できず、的外れな施策で改善が進まないことが少なくありません。
商品満足度、購入後フォロー不足、UXの問題、配送品質、競合流出、サイクル理解不足など、あらゆる要素がリピート率に影響します。ここでは、ECでよく起こるリピート率が下がる典型的な原因を整理し、改善の第一歩となる視点を分かりやすくまとめます。
商品満足度が低い・期待値とのギャップがある
リピート率が低下する大きな要因の一つが、顧客が商品に満足していない、または期待と実際の使用感にギャップを感じてしまうケースです。
購入前の説明が不十分だったり、誇張された表現によって期待値だけが高まってしまうと、実際に商品を使った際に「思っていたのと違う」と感じ、再購入につながりません。
とくに食品や美容・健康系の商品は感覚的な評価が多く、少しのズレでも満足度に影響を与えます。また、品質は問題なくても、使いにくいパッケージやわかりづらい使用方法が原因で満足度が下がることもあります。
リピートを伸ばすためには、購入前の期待値コントロールと、顧客体験を妨げる要素の改善が不可欠です。
購入後のコミュニケーション不足
商品購入後のフォローが不十分だと、顧客は商品を十分に使いこなせず、効果を感じる前に離脱してしまうことがあります。
とくに新規顧客は「正しい使い方がわからない」「期待した効果が得られていない気がする」などの不安を抱えやすく、フォロー次第で満足度が大きく変わります。
LINEやメールでのサポート、利用に役立つ情報の提供、よくある質問の案内など、購入直後のタイミングでのコミュニケーションが重要です。
適切なフォローがなければ、顧客は自分に合わないと判断し、別の商品へ移ってしまいます。
購入後の接点はリピート率に直結するため、放置は大きな損失につながります。
購入動線が分かりにくい・UI/UXの問題
サイトの操作性が低い、購入までの流れがわかりにくいといったUI/UXの問題は、リピート率の低下に直結します。
顧客が再購入しようと思っても、商品を探しづらかったり、カートから決済までの手順が煩雑だったりすると、途中で離脱してしまいます。
また、スマホ表示の最適化が不十分だと、画面が見づらい、操作しにくいといったストレスが発生し、購入意欲が削がれます。再購入ボタンの設置やステップ削減など、買いやすさを高める施策が不足している場合もリピートに影響します。
UI/UXの課題は「買いたいのに買えない」状況を生むため、販売機会の損失となりやすく、早急な改善が求められます。
配送スピード・送料への不満
配送に関する不満もリピート率低下の大きな原因です。
商品が届くのが遅い、発送連絡がない、梱包が雑、送料が高いなど、購入体験を損ねる要素があると顧客は次回利用を躊躇します。
特にECでは配送体験がブランド評価に直結しており、どれだけ商品が良くても配送で悪い印象が残ればリピートは期待しにくくなります。また、送料の設定が不透明だったり、高額に感じられたりする場合も、顧客満足度を下げる要因になります。
配送の迅速さ、丁寧さ、コストバランスはECにおける重要な競争力であり、改善することでリピート率は大きく向上します。
競合サイトに顧客を奪われている
顧客が他社商品と比較し、より魅力的なキャンペーンや価格、サービスを提供する競合サイトへ流れてしまうこともリピート率低下の原因です。
特にECは価格比較が容易なため、顧客がブランドへの愛着を感じていない場合、少しの差で乗り換えが発生します。また、競合の広告露出が増えれば、顧客の注意がそちらに向き、購買の優先順位が変わってしまうこともあります。
自社の商品価値が正しく伝わっていなかったり、独自性が弱い場合も競合に負けやすいポイントです。
顧客が自社を選ぶ理由を明確にすることが、競合流出を防ぎリピート率を維持するための重要な戦略になります。
購入サイクルを理解していない
リピート率が低い原因として、顧客の実際の購買サイクルに合ったタイミングでアプローチできていないケースがあります。
たとえば、30日で使い切る商品なのに、15日目に再購入の案内をしても早すぎて効果がありません。逆に、必要なタイミングを過ぎてから案内すると、他社商品で代替される可能性が高まります。
顧客がどれくらいの間隔で商品を使い切るのか、どのタイミングで再購入意欲が高まるのかを分析し、そのサイクルに沿ったコミュニケーション設計をすることが重要です。
購買サイクルを理解しないまま施策を行うと、機会損失が発生し、リピート率の低下を招きます。
ECのリピート率を分析する方法

リピート率を改善するには、まず「なぜリピートが起きているのか/起きていないのか」を把握する分析が欠かせません。
売上構成比、購入間隔、RFM、初回→2回目のファネル、属性分析、LTV推移、離脱ポイントなど、多角的に分析することで改善すべき課題が明確になります。データをただ眺めるのではなく、改善に直結する分析を行うために、実務で使われる分析手法を体系的に解説します。
新規・リピーター別の売上構成比を分析する
リピート率を正しく理解するためには、まず売上の構成が「新規顧客」と「リピーター」のどちらに偏っているかを把握することが重要です。
新規売上が大きく増えていると、一時的にリピート率が下がる場合があるため、全体の売上変動を誤って評価しないためにも、構成比の確認は必須です。
リピーター比率が継続的に低下している場合は、既存顧客の満足度や購入体験に課題がある可能性が高まります。また、構成比を月次・四半期単位で追うことで、広告施策や商品改善の効果も把握でき、安定性のある売上体質かどうかを判断できます。
構成比の可視化は、ECにおけるリピート率改善の最初の分析ステップです。
購入間隔(リピートサイクル)を分析する
リピート率を高めるには、顧客がどのくらいの間隔で商品を消費し、次の購入に至るのかを把握する必要があります。
購入間隔を分析することで、再購入を促すべき最適なタイミングが明らかになり、無駄な配信や早すぎる案内を避けられます。
たとえば、平均30日で使い切る商品なら、25日前後のタイミングでリピート案内を送ると効果が高まります。また、顧客ごとに購入サイクルが異なることも多いため、個別データをもとにセグメント化すれば、より正確でパーソナライズされたアプローチが可能になります。
購入間隔の分析は、リピート率改善の基盤となるデータです。
RFM分析で優良顧客を特定する
RFM分析とは、Recency(最近の購入)、Frequency(購入頻度)、Monetary(購入金額)の3軸から顧客をランク分類する分析手法です。
これにより、リピート率向上にとって重要な優良顧客がどの層にいるかを明確にでき、施策の優先順位付けにも役立ちます。優良顧客には高いLTVが期待できるため、特別な案内や限定キャンペーンを実施することで、さらなるロイヤリティ向上が狙えます。
一方、離脱しそうな顧客を早期に把握し、フォローアップ施策を実施することで、リピート率低下を防ぐこともできます。
RFM分析は顧客理解の精度を高める非常に有効なフレームワークです。
初回購入→2回目購入率(ファネル)を分析する
ECにおけるリピート対策で最も重要なのが「初回購入者をいかに2回目購入につなげるか」という視点です。
多くの事業では、2回目購入までのハードルが最も高く、ここを改善するだけでリピート率全体が大幅に向上します。分析では、初回購入から何日以内に2回目の購入が行われるのか、その割合はどれくらいかを可視化し、離脱ポイントを特定します。
そのうえで、使い方のサポート、到着後フォロー、レビュー依頼、特典付きの再購入案内など、施策の打ちどころを明確にできます。
初回→2回目のファネルは、すべてのリピート施策の出発点といえる重要指標です。
顧客属性×リピート率でセグメント分析する
リピート率は顧客属性によって大きく異なるため、年代、性別、地域、購買チャネルなどと掛け合わせて分析することで、どの層がリピートしやすく、どの層が離脱しやすいかを把握できます。
特定の属性の顧客だけリピート率が低い場合、その層にとって商品説明が不足していたり、使用シーンが合っていない可能性があります。また、特定の地域で配送不満が多いケースなど、課題発見のヒントにもなります。
細かなセグメント分析を行うことで、改善施策の精度が高まり、無駄なコストをかけずにリピート率を向上させられます。
属性分析は、顧客を深く理解するための不可欠な手法です。
LTVの推移とリピート率の相関を分析する
リピート率の改善が、売上や利益に直結しているかを判断するためには、LTV(顧客生涯価値)との関係を分析することが重要です。
リピート率が高まっていても、購入単価が下がっていればLTVが伸びない場合もあります。逆に、2回目・3回目の購入単価が上がる傾向があれば、LTVの向上につながります。リピート率とLTVをセットで分析することで、事業がどれほど健全に成長しているか、顧客の価値がどのように変化しているかを把握できます。
また、施策の影響を長期的に評価することも可能になり、投資判断の精度が向上します。
離脱顧客(休眠)の発生ポイントを分析する
リピート率低下の背景には、「どのタイミングで顧客が離脱したのか」を把握できていないことがあります。
休眠顧客の発生時期を分析することで、利用されなくなる原因を特定できます。たとえば、初回は購入したものの2回目につながらない場合は、商品理解不足やフォロー不足が原因となっている可能性があります。逆に3回目までは購入するが、そこから離脱する顧客が多い場合は、商品満足度の低下や購買サイクルとのズレが疑われます。
離脱ポイントが明確になれば、適切なタイミングでリマインドや特別オファーを配信でき、休眠防止の効果が高まります。
チャネル別のリピート率を比較する
広告、SNS、SEO、メルマガ、LINEなど、顧客がどのチャネルから流入したかによってリピート率は大きく異なります。
たとえば、広告経由の新規顧客は期待値が高くなりやすく、満足度が下がると離脱しやすい傾向があります。一方、口コミや検索流入は自発的な興味から購入するため、リピート率が高い傾向があります。チャネル別に比較することで、費用対効果の高い集客方法が明確になり、投資配分の最適化が可能になります。
また、チャネルごとのコミュニケーション設計を見直すことで、リピート率の底上げにもつながります。
商品別リピート率(回転率)を分析する
商品ごとにリピート率を分析すると、顧客がどの商品を継続して購入しているか、逆にどの商品で離脱が多いかを把握できます。
特にラインナップが多いECでは、全商品の平均値では実態が見えず、改善の優先順位を見誤る可能性があります。リピート率が高い商品は、顧客との相性が良く、売上の柱となる可能性が高いため、広告配分や在庫戦略を強化する判断材料になります。
一方、リピート率が低い商品は、品質改善や説明不足の解消など、改善対象として可視化されます。
商品別分析は、事業全体の効率化に欠かせない視点です。
カスタマーサポート起点の離脱要因を分析する
顧客からの問い合わせ内容には、離脱につながるヒントが多く隠れています。
サポートへの問い合わせが多い商品は、説明不足や品質問題が潜んでいることがあり、それが原因で再購入につながらないケースがあります。
また、対応が遅い、返信が不十分といったサポート品質の低さも、顧客離れの理由になります。問い合わせの内容を分類して分析すれば、どのポイントで顧客が不満を感じているかが可視化され、改善施策につなげることができます。
顧客の声を継続的に吸い上げる仕組みは、リピート率向上のための重要なデータ資源です。
リピート率と合わせてみるべき指標

リピート率だけでは、EC事業の実態を正しく評価することはできません。
LTV、購入頻度、平均注文額(AOV)などを合わせて見ることで、「顧客がどれほど価値を生み出しているのか」「どこを改善すれば利益が増えるのか」が明確になります。リピート率とその他の主要指標を組み合わせることで、より立体的に事業を分析し、最適な意思決定を行えるようになります。
顧客生涯価値(LTV)
リピート率と最も深い関係にある指標がLTV(顧客生涯価値)です。
LTVとは、1人の顧客が生涯を通じて企業にもたらす利益の総額を指し、EC事業の採算性や成長性を判断するうえで欠かせない指標です。
リピート率が高いほど継続的な購買が期待でき、結果的にLTVも上昇します。一方、リピート率だけが高くても購入単価が低かったり、購入間隔が長すぎる場合は、LTVが十分に伸びないケースもあります。そのため、LTVとリピート率をセットで分析することで、顧客価値を最大化するためにどの改善を優先するべきかが見えてきます。
またLTVが高い顧客を中心にCRM施策を最適化することで、限られたリソースを効率的に活用でき、事業全体の収益性を高めることができます。
購入頻度(Frequency)
購入頻度は、顧客が一定期間内にどれだけ繰り返し購入しているかを示す指標で、リピート率と密接に関連しています。
同じリピート率でも購入頻度が高い顧客は収益への貢献度が大きく、優良顧客として重点的に育成する価値があります。購入頻度を把握することで、適切なタイミングでのリピート促進施策が可能になり、無駄な配信や過剰な値引きを避けられます。また、購入頻度が低下している場合は、商品満足度の低下や競合流出などの課題を早期に発見できるメリットもあります。
顧客がどれだけのペースで商品を利用しているかを理解することで、コミュニケーションや商品改善の方向性が明確になり、リピート率全体の底上げにもつながります。
平均注文額(AOV)
AOV(平均注文額)は、1回の注文あたりの平均購入金額を示す指標で、リピート率と並んでEC事業の収益性を左右する重要指標です。
リピート率が高くても、AOVが低い場合は売上の伸びが限定的になるため、両者を合わせて分析することで事業の健全性をより立体的に理解できます。
AOVが低い原因としては、アップセル・クロスセル施策が不足している、セット販売の訴求が弱い、商品ラインナップが最適化されていないなどが考えられます。
また、AOVが高い顧客ほどLTVの向上にも寄与するため、購買単価の高い層への施策強化は効果的です。AOVの推移とリピート率の変化をセットで追うことで、EC全体の収益改善につながる施策の優先順位が明確になります。
ECのリピート率を向上させた成功事例

リピート率改善の具体的なイメージをつかむためには、実際の企業の成功例を見るのが最も効果的です。
A社(美容系)、B社(日用品)、C社(食品EC)それぞれの成功事例を見ていきましょう。
A社:使用感の不一致を解消し、リピート率が大幅改善した事例
A社は美容系商材を扱うECサイトで、初回購入数は増えているにもかかわらず2回目購入率が20%以下と低く、リピート率が課題となっていました。
分析の結果、商品ページに十分な情報がなく、使用感が事前に伝わらないことで顧客が実際に使った際に「思っていたのと違う」と感じ、継続につながらないことが判明。そこで動画や比較写真、使用ステップなどのコンテンツを強化し、さらに購入後のアフターフォローを改善しました。
これにより商品の理解度と満足度が向上し、2回目購入率は32%から51%へ改善。広告依存度が減ったことで利益率も向上し、安定した売上基盤の構築につながりました。
B社:購入サイクルに合わせたCRM設計で継続率を向上させた事例
日用品を販売するB社では、顧客の消費ペースを把握しないまま画一的なメルマガを送っていたため、購入に最適なタイミングを逃していました。
分析により商品ごとの購入間隔を可視化し、顧客ごとに最適な配信タイミングを設定することで、再購入を促すコミュニケーション設計が可能に。また、休眠に入りそうな顧客へは特別オファーや使用のコツを案内することで離脱を防止。
施策全体により2回目〜5回目購入率が平均15%向上し、年間LTVも上昇。定期購入の導入比率も増え、売上の安定化と利益率改善につながりました。
C社:UI/UX改善と定期購入導線の設計で売上が昨対200%に成長した事例
食品ECのC社は商品評価は高いものの、購入導線が複雑で再購入率が伸びませんでした。
そこでサイト全体のUI/UX改善に取り組み、スマホ最適化や購入ステップ削減、再購入ボタンの配置など“買いやすい設計”を徹底。また、使用頻度が高い商材だったため、顧客の利用ペースに合った定期購入プランを作り、初回購入後に自然に移行できる導線を構築しました。
その結果、定期購入加入率が急増し、全体のリピート率も改善。売上は昨対200%を達成し、利益体質の改善にも成功しました。UXと定期モデル設計の重要性を示す代表的な成功例です。
まとめ
ECのリピート率は、事業の安定性・収益性・成長性を大きく左右する最重要指標です。単に「繰り返し買われているか」を見るだけでなく、顧客満足度、購入体験、商品価値の伝わり方、ブランド力など、EC運営の本質的な課題を映し出す鏡でもあります。理想のリピート率は業界や商材によって異なるため、自社の特性や競合基準を踏まえた評価が欠かせません。また、基本の計算式だけでなく、コホート分析やファネル分析、LTVとの相関など、多角的にデータを見ることで課題の本質が明確になります。
リピート率向上に必要なのは、商品価値を正しく伝えるコンテンツ設計、購入後のフォロー、買いやすいUI/UX、CRMによる顧客理解、そして継続したブランド体験の提供です。さらに、配送品質や競合状況、顧客サイクルなど、離脱の要因にも丁寧に向き合う必要があります。事例にあるように、適切な改善を行えばリピート率は大きく変わり、売上・利益・LTVの向上につながります。
リピート率は「顧客がどれだけあなたのブランドを信頼しているか」の象徴です。データを正しく理解し、一貫した改善を重ねていくことで、広告に依存しない強いEC事業を実現しましょう。








